チェルノブイリの教訓は活かされなかった

Publié le par francemedia

4月26日 Le Monde

 

 26日付ルモンド紙では、チェルノブイリ事故発生から25年を記念した特集記事を掲載している。以下は、ユーリ・バンダイェフスキー(ベラルーシ・ゴメル医科大学長、解剖病理学教授)、ミッシェル・リヴァジ(欧州議員、仏放射線に関する独立研究情報委員会(Criirad)創設者)、ダニエル・コーン・バンディ(欧州議員、欧州議会緑の党(Verts)グループ委員長)による共同論文の抜粋訳。

 1986年4月26日、チェルノブイリ原発の第4号機が爆発した。今日の科学研究者達にとって、この原子力災害と放射線被害を被った地域における経済成長の低下には因果関係があることは疑いないと著者達は語る。特にベラルーシでは、マイナス5.9%の経済成長率と人口の激減を記録したという。
 出生率は激減し、毎年増え続ける心血管疾患とガンによる死因データが不安な数値を示している。出生率の低下は生殖機能の不全と胎児の成長を妨げる重度疾患に関係している。チェルノブイリ事故では、代謝の問題を持った人々がセシウム137のような放射性核種に25年間も晒されることで遺伝子にダメージを受け、さらに健康状態を悪化させている。
 また旧ソ連、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアの各政府はチェルノブイリ事故による問題を管理する能力が全く無かった。この失敗の原因の一つは、放射性物質の人間の健康への影響についての客観的な情報が不足していることにある。さらに、情報検閲の大きな理由は原子力ロビーとベラルーシ専制政権との癒着にある。
 生物圏に放射性核種を放出し続けている福島原発が25年前のチェルノブイリ原発の爆発による汚染を想起させる中、緊急に放射線防護の措置が取られることが求められる。長年、欧州連合によるチェルノブイリ事故への援助は、原発敷地の安全措置と石棺作業に費やされて来た。4月19日、欧州委員会は1億110千万ユーロの追加援助を決めたが、言うまでもなくその一部は衛生分野の計画に使われなければならない。
 障害や死をもたらす病気の予防のためには、具体的な政治行動と適正な情報発信なくしては、いかなる放射線防護も役に立たないことは言うまでもない。
 これは決定的なことである。例えチェルノブイリ事故を取り巻く「異常」が、民主国家で起きている状況とは一切関係ないとしても、公正な情報へのアクセスは常に保証されるものではない。
 我々は福島原発事故で改めてそのことを認識した。だが原子力事故においてこの原則はまさに命に関わる問題なのだ!

 代替エネルギーは存在する


 キエフの「エコロジーと健康」分析連絡センターは重要な存在である。その役目の一つとして、汚染地域の客観的な状況評価と原子力事故における住民と救助隊員の保護システム、そして汚染が欧州全土に広がるのを防ぐために犠牲になった数千人の「掃除人(liquidateurs)」達を含むチェルノブイリ被害者のリハビリ施設が設立された。今後同センターは放射線被曝による病気に苦しむ患者のリハビリと予防において例のない知見を有することになる。
 この計画は今後生まれる汚染地域や原子力事故でも活かすことができる。福島においても同様の計画を始めることが可能だ。原子力テクノロジーと放射能被害は人間にとって現実的な脅威になっているのだ。
 真実を隠蔽することを止めれば、核武装と民間原子力への競争がどんなに無意味なものかすぐに分かる。たとえフランスがチェルノブイリ原発から流れて来た放射能雲を国境で止めたり*、全く言い方を変えれば、北アフリカ移民を乗せたイタリアからの列車を止めたりする**魔術を使えたとしても、多くの人々が次第に原子力の危険性を意識し始めている。
 チェルノブイリと福島事故の悲劇に加え、(原子力施設で続く)「過少な」事象群と、未だ解決されていない放射能廃棄物処理と原発解体の問題がある。この時代遅れのテクノロジーは巨額の公的資金を使い続けており、さらに直接的また間接的な放射線露出の人体への影響を考えると、段階的な原子力脱却を真剣に考えずにはいられない。
 単なる「正気を失った者の夢」ではない「脱原発」。フランスを抜いて世界経済のトップを担うドイツのような政府に信頼のおける政治選択が必要だ。
 原子力の代替エネルギーは存在する。それは、「シナリオ・ネガワット***」の推奨者達に代表される環境団体や有名な研究者や技術者達が長年に渡って証明してきたことでもある。2050年までの気候目標を維持しながら脱原子力を可能にするテクノロジーがあるのに、原子力ルネッサンスの神話を謳う国家が未だにある。
 欧州におけるエネルギーの未来と温室効果ガスの削減は、我々が今後10年で行う投資によって決まる。原子力の推進者達と再生可能エネルギーの推進者達の間の力関係において、この「古くさい」原子力テクノロジーを選ぶか、持続可能で責任のある未来を築くことができるテクノロジーを選ぶかは、我々自身にかかっているのだ。

*チェルノブイリ事故当時、放射能雲がフランスに到達したのではという懸念に対して、仏政府は「チェルノブイリからの雲はフランス国境で止まった」という公式見解を出した。
**昨今の民主革命後、イタリアを経由してフランスに入国しようとするチュニジア人移民を拒否する仏政府の政策を揶揄している。
***仏国内の再生可能エネルギーと建築分野の専門家を集めた民間団体で、省エネと再生可能エネルギーと軸として、温室効果ガスを2050年までに75%削減する「シナリオ・ネガワット」を提唱している。http://www.negawatt.org/

 

 

http://www.lemonde.fr/idees/article/2011/04/25/les-lecons-de-tchernobyl-n-ont-pas-ete-tirees_1512523_3232.html

Pour être informé des derniers articles, inscrivez vous :

Commenter cet article

akinorio 27/04/2011 02:08


1986年に訂正した方がよくないですか?


francemedia 27/04/2011 09:47



ご指摘をありがとうございます。早速訂正いたしました。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。編集スタッフ一同。